私が望む社会保障の姿と負担のあり方
「高福祉応分の負担」を考える
「高福祉応分の負担を考える」 今回は、小島美里氏
特定非営利活動法人暮らしネット・えん代表理事
1984年より96年まで埼玉県新座市議会議員(無党派)。2003年NPO法人暮らしネット・えん設立。現在、居宅介護支援、訪問介護、認知症デイサービス、グループホーム、小規模多機能ホームの5事業がある。
社会保障の充実を言うと、「財源は?」と返ってくる。「埋蔵金がある、消費税率を上げる、所得税、法人税を上げた方がよい。受益者負担が当然」等、様々な意見があるが、正直言ってよくわからない。財源確保こそ政治の責任だ。責任を持って説明がなされ、みんなが納得できる財源であればよい。その上で「応分の負担」は受け入れる。もちろん低所得者対策は充分に行った上で。様々な課題の中でも安定した社会保障の優先順位は高いはずだから、その財源確保の方法が受け入れられるかどうかは、政治に対する信頼度にかかっている。
■ 誰もが高福祉を受けられる社会に
人間らしく生き、人間らしく死んでいく、その最低限度を憲法で保障された国に暮らしている。認知症であれば、栄養のある温かな食事、清潔なからだ、暑さ寒さをしのげる住まい、適切な医療、認知症を理解して支えられるケア環境が「最低限度」と言えるだろう。でなければ現役世代だって安心して働けない。
現状は、利用料負担が重いので要介護になっても必要なサービスを充分利用できない人や、はなから利用をあきらめている人さえいる。その上、適したサービスを選びたくても様々な不公平が立ちふさがる。認知症グループホームを例に挙げるなら、室料や食事代などのホテルコスト分が高い。例えば、被爆者手帳を持っていれば介護保険1割負担分だって戻ってくるのに、なぜか適用外。これが特養ホームや老健施設であれば所得によってホテルコスト分は補足給付される。被爆者などの公費負担だって付く。支払う費用は大きく違ってくる。グループホームが適していると思っても、費用が高くて選べないことがよくある。「介護の沙汰も金次第」が現実なのだ。
介護に使える財布事情はそれぞれだ。大雑把には、大企業の社員や公務員だった人、代々の資産がある人などは年金も高く余裕がある。自営の職人や小さな商店、農林業や漁業に就いてきた人は余裕がない。誰もが「応分の負担」で「高福祉」を受けられる高齢社会であってほしい。
また、世帯単位でなく、個人を基本単位にしていくことを急いでほしい。家族介護を強要せず、増加する単独世帯に対応するために。
■ 介護職の社会保障も
質の高いケアを目指せる介護環境を作りたいと切実に願っている。派遣切りなどにあった人々を介護へと言うが、適正も能力も求められる専門職なのだ。誰でもできる仕事ではないのに介護職員の待遇は全産業賃金平均で月額11万円も低く、若い人が希望を持って選べる職種ではない。「家族の会」が、待遇改善のためには負担が多少高くなっても良いと決定したのは、嬉しい限りだ。
ケアを受ける人も支える人もガマンしない社会を目指すのが、「社会保障のあるべき姿」だと信じている。
2010年1月25日発行会報「ぽ~れぽ~れ」354号より