要介護認定めぐり、賛否の対論
「家族の会」本部が主催する世界アルツハイマーデー記念講演会が、9 月19 日に京都で開催されました。
「どうする介護保険─要介護認定・財源・地域包括ケアを中心に─」がテーマで、会場いっぱいの300 人の参加がありました。
最初に、若年認知症のご主人を介護されてきた京都市の片岡喜久子さんから介護体験の発表がありました。片岡さんのお話は、落ち着いた口調の中にも心打つものがあり、冒頭から司会の髙見代表は言葉を詰まらせていました。今日の制度についての話が片岡さんのような体験と密接に結びついたものでなければならないと感じさせてくれた場面でもありました。
この講演会の一番の注目は「要介護認定廃止」をめぐる白澤政和氏と堤修三氏との対論でした。まず、白澤氏が、今の要介護認定を生活の視点からみなす必要がある。介護度がお金がらみで論じられるなど信頼を失いつつある。介護度に対する幻想を捨てて、廃止の方向で議論すべきである。
それに代わってケアマネジャーなどの専門職に権限を委ねる道もある。10 年間の経験でそのための力も育ってきている、と述べられました。
これに対し、堤氏は、まず支給限度額が必要であり、要介護認定はそれを導き出すための手続きである。これは介護保険にとって廃止しようにも廃止できないものである。要介護認定廃止は、ユートピア的な議論であり、複数の人の目で判断すれば客観的な結論が導き出せると考えるのは“天動説”にも等しい、と述べられました。また、全国統一の基準に基づくことにより、要介護認定が保険者の恣意的な給付抑制を防ぐ機能を果たしているとも述べられました。
お二人の発言に対してケアマネジャーの山下宣和さんや片岡さんが質問をし、さらに会場からも質問を受け、両先生が答えました。
この対論の最大の目的は、議論に決着を付けるのではなく、同じ土俵の上で多くの参加者と共に考えることにありました。そして、結果的に、このテーマが介護保険の充実発展を共に願う立場から、十分かつ深く議論する必要があるものであることを示すことができたと思います。
そのあと、「家族の会」から田部井が、今の要介護認定も、「保険者を加えた新たなサービス担
当者会議」の提案も、介護保険の適用を判断するための選択肢の一つとして、どちらが優れているかという視点で議論してほしい。「家族の会」は、利用者本位、利用者がより決定過程に関われる制度を提言していると説明を行いました。
講演会の最後に認知症の人本人である広島県の竹内裕さんが登壇されました。いつもながらの髙見代表の見事な司会ぶりによって軽妙なトークが展開し、これが本当に認知症の人かという驚きを感じられた方もいたようでした。竹内さんの口から発せられる前向きな言葉の一つ一つが先行きに何か明るいものを感じさせて幕となりました。
(理事・介護保険専門委員会委員・講演会で提言の説明田部井康夫)
世界アルツハイマーデー記念講演会in 京都
白澤政和氏、堤 修三氏
▼(壇上左から)白澤、堤、髙見、片岡、山下、田部井氏
▼ 対談する竹内裕氏(右)と髙見代表
2010年10月25日発行会報「ぽ~れぽ~れ」363号より