「提言」のここに注目
介護サービス利用者に、作業報酬を支払うことを認める
前田隆行
東京都町田市で展開している若年性認知症デイサービス代表
若年性認知症の方に必要な「就労支援」とは?
障害者施策では、支援方法が全く異なる。この就労支援では、身体障害者はもちろん、精神障害者や知的障害者を例にしてみても、指示する回数や場面が異なる。若年性認知症の就労支援では、その時、その場で、その日の体調や病状も含めながら、まずは本人の意思を行動に移せるような支援が必要である。また、症状である「思い出せない」「できない」「どうすれば?」等々を見極めながら、可能な限り「できるように」「自信やプライドを保ちながら」「充実感を得る」ように、支援していくことも大切だ。その他に、「やりたくない」「今日はもう止める」といった時は、体調が悪いのか、認知症の症状として意欲低下が見られるのか、その仕事に対して自信がなくプライドを保つためにそう言っているのかなど、多方面の角度から見極める力も必要になってくる。
そして何より、障害者自立支援法の就労継続支援ではどちらかというと、『仕事内容に利用者を当てはめる』ところがあるが、介護保険法の就労支援は、デイサービスの一環として行われるので、『仕事内容を利用者に合わせる』ものである。
お金を払って仕事をしている矛盾???
メンバー(利用者)は、仕事をするために[デイサービス○○工務店]へ“出勤”している。それは、デイサービスを利用していると思っていない。だから、メンバーは「毎日でも工務店で仕事がしたい」と思っているが、“出勤”するたびにサービス利用料の1割負担が圧し掛かってくるのが現状だ。なぜ、“出勤”すればするほど、お金が家計から出て行ってしまうのだろうか。普通、仕事とはお金を稼いでくるもの。それが認知症となり介護サービスを受けながら働くと、逆にお金が出ていくばかりだ。おかしな矛盾がここにある。
“就労介護”という捉え方を次期介護保険改正に強く望む
現行の介護保険制度では、「介護を必要としている人たちが、介護サービスを利用しながら“働いて報酬を得る”ということは理念上ない。働けるのであれば、介護サービスは必要としない」という考えが一般的。そして、「就労支援という言葉は、障害者自立支援法の中から出てきた考えであり、介護保険の中にはない」とある。
私たちは「介護の場面は必要としていても、まだまだ認知症の人でも働ける。本人たちは何を求めて介護サービスを利用しているのか? 本人中心のケアを実行するならば、また就労支援という概念が介護保険制度にないのであれば、就労介護という新たな概念を創生するべきである」ということと、「誰のための介護保険制度なのか」ということを強く提案していかなければならない。
ただ、「何をもって若年性認知症の就労介護とするのか」というような課題も予想される。一つの案としては、「保険者に対して定期的な就労介護の実績報告をすることによって認可される」というものも考えられる。