新型コロナ暮らしへの影響 調査報告(認知症関係当事者・支援者連絡会議)

認知症関係当事者・支援者連絡会議では、「新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響」調査を実施し、その内容をまとめました。 (2022年8月3日)

認知症関係当事者・支援者連絡会議(「家族の会」ほか3団体)では、2022年2月~4月10日(約2か月間)に新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響調査を実施し、下記の通り調査報告を公表いたしました。

今回の調査結果から、特に重要な課題として次の3点を挙げています。

 ①在宅介護における介護家族の体調不良時の支援策の早期検討

 ②感染発生を理由にした介護保険サービスの中断を最小限にする必要

 ③入院/入所に伴う家族の面会制限への柔軟な対応

下記の概要と、詳細な報告書をダウンロードいただけますので、ぜひご覧ください。

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概要版:新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響(PDF6ページ)

詳細版:新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響(PDF34ページ)

I.はじめに 調査実施の背景

認知症関係当事者・支援者連絡会議におけるコロナ下の対応

2020年9月に緊急アンケート実施  

→「新型コロナウイルス感染症流行下における認知症の人と家族への対応・支援に関する緊急要望書」を厚生労働大臣に届けた。

【要望内容】

1)認知症の人に対する新型コロナウイルス感染症対策の全国基準の指針をつくってください

2)介護家族等が希望すればPCR検査を受けることができ、感染防止対策を十分にとったうえで、 病院や施設での面会やこれまで利用していた介護サービスが再開できるよう支援してください

3)要介護者の通所系・入所系サービスにおける介護報酬上の特例措置による利用者負担の上 乗せは、ただちに撤廃してください

これらの要望の内容は、1年以上を経た現在も大きな進展が得られているとはいい難い。特例措置(新型感染症に伴う介護保険サービスに関する費用の利用者同意の有無による負担措置)は2020年度で一旦終了したが、2021年度の介護報酬において加算されて実質的に利用者負担が継続している。認知症の人と家族が新型コロナウイルス感染症の感染者や濃厚接触者となった時の対応についても、地域差があり、基準はあいまいなままである。病院や施設での面会制限についても厳しい状況は依然続いている。現状は1年前と大きく変わっていないように見える。しかし、感染者への対応経験の蓄積、ワクチン接種の推進など少しは状況が変化している。

II.調査の目的

新型コロナウイルス感染症の猛威が未だ終息しないまま2年近くの行動制限や自粛を要請される状況において、認知症の人と家族の生活への影響と、この間に実施された介護報酬の改定に伴う影響の実態について調査する。

III.調査方法

感染第6波の渦中であった2022年2月~4月10日(約2か月間)に実施した。

Google FormsによるWebアンケート調査(HPやSNS、関係者に周知、協力の呼びかけを行った。

調査対象は、認知症の人とその家族、支援者(ボランティア・保健医療福祉関係者等)とした。

IV.調査の概要

41都道府県から288件の回答を得た。

回答者の主な立場は、介護家族から129件、認知症の本人(代理回答を含む)4件、支援者(専門職、ボランティア)148件であった。

1)認知症の人と家族の感染状況

①認知症の人と家族が感染者もしくは濃厚接触者となったと回答したのは31%(感染21%、濃厚接触9%)であった。

②感染/濃厚接触であった73件中「ほぼ無症状で経過した」37%、「現在、治療中である」10%、「治癒した ほぼ回復している」40%、「治癒した 後遺症があり悩まされている」3%、「無念だが、死亡した」5%であった。

③新型コロナウイルス感染症の感染/濃厚接触時の対応は、「大変だった:1」25%、「2」24%で半数が大変だったと回答した。

④新型コロナウイルス感染症に認知症の人や家族が感染したり、濃厚接触となった経験で、困ったことや大変だったことの自由記述(表18)から、[認知症の人は体調変化を把握しにくく、感染対策の順守も難しい]ため[感染時の対応の遅れや他疾患の治療の遅れが命取りになる]。実際に〈感染したが対応が遅れ死亡した〉〈認知症の人が感染したことを認識できず行動してしまう/隔離期間中に体調不良でも受診が困難で病状悪化した〉〈感染入院後に機能低下をした〉など、感染症以外の体調不良に関しても発見・対応が遅れる可能性があること、〈独居者の感染時の対応に時間がかかった〉〈感染の確認に手間どった〉という対応の難しさがある。そして、[認知症の人と家族、いずれかが感染しても、介護が困難となる]〈感染しても入院もできず、介護ができない〉〈家族が感染したときに誰が介護をするのか〉という不安の中で〈サービスが利用できず介護負担が増した〉〈遠距離介護で制約があり看に行けない〉という介護家族のジレンマを生んでいる。また、感染対策として行われていることに関し、[感染者との接触によりサービスの利用制限や生活への支障があった]〈濃厚接触者でなくてもサービスが利用できず困った〉〈濃厚接触時の待期期間や対応の曖昧さがある〉ことで、介護家族も支援者である専門職やボランティアも困惑している。特に専門職は[事業所の業務上の困難があった]〈通所介護の感染対策支援が乏しい〉〈事業所のスタッフの感染により運営が困難である〉など感染下の対応の困難さを訴えていた。

2)新型コロナウイルス感染症の認知症の人への認知症の症状など心身への影響

① 「認知症の程度がすすむなどの影響があった」32%、「心身機能の低下(認知症以外)の状態が悪化した」26%であった。

②影響の程度は、「とても影響を受けた:5」22%、「4」が32%で半数以上がある程度影響を受けていたと回答した。

3)コロナ下における介護保険サービスの利用の影響

  • ①感染蔓延による不安を背景とした介護サービスの利用については、「介護保険のサービス利用を減らした時期がある/今も減らしている」26%、「利用している介護保険サービスの種類を変更した」11%、「介護保険サービスの利用を中止した」2%であった。
  • ②変更したサービスは、デイサービス29%、ショートステイ10%が多かった。
  • ③変更の理由は、「感染蔓延により事業所が閉鎖・利用の制限が行われた」23%が最も多かった。介護保険サービスは感染状況により、特に通所系のデイサービスの利用が中止されたり回数を減らされたりという事業者の感染対策による状況があった。一方で利用する側として感染を恐れ利用を控えた回答も15%あったこと、感染を恐れて入所を検討したり利用を増やしたという回答もあったことから、それぞれの理由で新型コロナウイルス感染の影響を考慮していた。また、感染対策を実施しつつ受け入れている施設側から、認知症の人の状況により利用を断られたケースも6%あった。
  • ④コロナ下での介護保険サービスで困ったことの自由記述(表13)から、【感染/感染疑い時の対応が困難だった】【感染への不安があることや感染対策下にあることで介護生活に支障があった】【感染対策によりサービスの利用制限や休止などがあり利用できなかった】【感染対策により交流や面会が制限されることで、支援が行き届いていない懸念がある】【事業所や支援体制の課題がある】があった。

(a) 【感染/感染疑い時の対応が困難だった】には、[感染陰性でも体調不良があることを理由にサービスが受けられず要介護の家族を抱えて途方に暮れた][発熱や体調不良時、あるいは濃厚接触者となった時の認知症の人と家族の受診対応、検査の実施、自宅待機への支援が十分でなかった][感染時(陽性判定後)の対応に困った]があった。[感染陰性でも体調不良があることを理由にサービスが受けられず要介護の家族を抱えて途方に暮れた]は、「PCR陰性でも介護家族に発熱があったら看護師が来てくれなかった。介護家族に発熱があっても、PCR検査結果が出るまでデイサービスの利用を自粛するよう言われたが、要介護者を家に置いて(中略)受診もできず、訪問診療でPCR検査してもらった。PCR検査結果が出るまで全くサービスが受けられず、介護者が体調悪くても一人で頑張るしかない状況だったため、無理が祟って体調の回復に2カ月かかった」「介護者が体調悪く、休養をとりたかったのに、利用を断られて途方に暮れた」「同居の家族が発熱の際に今後のことを考え行き詰まり感を感じた」と感染が蔓延する中で。感染疑い時からの対応への不安の声があった。また、認知症の人や家族が発熱などの体調不良時の受診、濃厚接触となった場合、認知症の人と家族への支援がほとんどなかったこと、そして感染時、家族だけが感染した場合、認知症の人を預けられる安心できる体制がないことへの不安の声もあった。

(b) 【感染への不安があることや感染対策下にあることで介護生活に支障があった】として、[感染への不安があり対応に困った]状況があり、介護家族も支援者も〈感染させないよう、感染しないように気を遣った〉中で〈感染の不安から認知症の人が精神的に不安定になった〉状況や、〈感染するのではないか、させたくないという家族の思いに行政や事業所が対応してくれなかった〉。とくに、〈認知症の人は感染対策が厳密にとれない〉状況があり[感染への不安に対して適切な対応が取れない不安がある]。また、〈認知症の人と家族自身が感染することに不安があり、介護サービス利用をためらっている〉状況があり、〈感染の不安によるサービスの利用控えで介護負担が増加している〉〈サービスの調整ができない〉など[感染への不安や感染蔓延下であるためサービスの調整ができなかったり、開始ができない状況がある]。

(c) 感染が拡がる中で〈事業所の感染対策による自粛で予定のサービスが受けられなかった〉り、〈ショートステイでPCR検査がサービス利用条件とされている〉ことや〈微熱でもショートステイが利用できない〉〈ショートステイが利用できない〉などショートステイを中心とした[感染対策により予定のサービスが受けられなかったり、利用しにくかった]状況があり、【感染対策によりサービスの利用制限や休止などがあり利用できなかった】。また、[感染者の発生によりサービス自体が休止してサービスを利用できなくなったため家族が介護したが、支障があった]では、〈利用サービスが感染により閉鎖された間、代替サービスがなく介護家族等が介護した〉。そして、〈利用サービスの休止による代替サービスの提供が難しい〉状況があること、〈予定外のサービス利用、希望するサービスが受けにくいなどサービス利用が困難である〉ことから[感染者の発生による感染対策によりサービス利用の自由選択ができなくなった]。

(d) 感染対策の中で在宅サービスを利用する際の同居家族や接触者の行動制限について[サービスを利用するための家族の行動制限や家族と会うことによる利用制限があり困った]状況があり、〈ショートステイの利用に際し、家族等の行動制限をしないとサービスが利用できず困った〉〈家族との接触によりサービスの利用が制限された〉〈県外の家族との接触によるサービス利用制限があり困る〉といった厳しい制限が課され困った状況があった。

(e) [感染対策などによりサービスが十分に受けさせられず、本人の心身機能に影響をしたり、今後も影響することが心配である]では、〈面会ができないことで心身機能に影響があった〉〈受けたいサービスが感染対策により受けられず、機能低下が心配〉という介護家族の不安があった。面会が極度に制限され十分に状況を確認できない中で、本来もっと関わったり、様々なサービスや医療やリハビリテーションを受けさせて回復させたい介護家族の思いがあり、施設や病院にいる認知症の人の状況悪化への不安を懸念していた。特に、介護家族は[面会制限によりできるはずの支援ができない]という思いがある。特に面会制限により「家族がケアハウスの居室に入室禁止になり家族の支援(居室掃除・衣替え等)ができなくなった」「本人に会えない〜窓の外だったりする。またお互いマスクをつけているため、うちの母は耳が悪いため『何を言っているのかわからない』という。部屋の方にも行けないため、何が必要で何が要らないのか良く分からない」という家族の思いが認知症の人に伝えられないこと、〈外出や外泊ができない〉というやってあげたいのにできないジレンマを抱いていた。

(f)【感染対策により交流や面会が制限されることで、支援が行き届いていない懸念がある】。[交流が制限されている状態がある]としてまとめたが、ここには主に施設や病院にいる認知症の人との〈面会ができない〉〈面会の頻度が減った〉〈面会が制限されている〉ことと、施設内病院内においても認知症の人が〈他者との交流の機会が減少している〉ことが介護家族と支援者特に専門職からも指摘されていた。特に、介護家族と支援者から〈人権にかかわる面会制限がある〉として「面会が一切禁止になり、通院できなかったり、自宅へ帰って家族が体調チェックをしていたのに、一切禁止で体調が悪化して入院になった。また、外出も禁止、外への散歩もできず。この2年近く外に出れなかったので、人権に触れると思う」「面会の制限について大変でした。特に終末期の看取りの段階の際人権を尊重し、人間らしく看取りを迎えさせてあげたい(看護小規模多機能型居宅介護事業運営)」という人道的観点から面会実施を再考すべきという厳しい意見があった。

(g) [面会を制限することにより情報伝達に支障が生じ、双方に支障が生じている]では、〈面会ができないので本人の状態把握を自分の目で確かめられず、職員の説明に頼るしかなく不安がある〉という介護家族と支援者(ボランティア)からの回答がある一方で、〈連携のための情報交換や対応が十分にできない〉という支援者(専門職)からの困難な状況も回答があった。

(h) 【事業所や支援体制の課題がある】としてとして、〈施設による感染対策の下での受け入れの対応の差がある〉こと、〈事業継続上の困難があった〉として人材確保などの[事業所の管理運営上の困難がある]状況の専門職のジレンマがあった。

4)入院/入所している認知症の人との面会状況

  • ①2020年3月の緊急事態宣言前後の入院/入所している人たちの面会状況は、「ずっと面会ができていない」21%、「オンライン面会で顔をみたり、話すことができた」22%であった。
  • ②直接に会うことはできても「窓越しやガラス越しに離れてみる程度だった」18%で、「息づかいが聞こえるくらい近寄って会うことができた」5%、「身体に触れることができた」4%であった。それでも「受診時の付き添い等で寄り添えた」10%があった。一方、「コロナ禍前と同じように面会できている」という回答は2件あった。
  • ③面会できた状況は、退院や看取りなど「必要性があって会えた」他、「受診時の付き添い」「感染蔓延が落ち着いたころを見計らい許可された」などがあった。オンラインの面会の導入もされている施設はあるが、「本人にはあまり意味がない」(認知機能が低下しているため面会しているという認識が難しい)という意見もあり、やはり対面での面会を求める声は多い。それに対しての工夫は、直接面会をしているとしても遠いガラス越しであって声も届きにくかったりすることから、さらなる工夫が求められている。一方で施設入所の場合、受診時の付き添いは可とされる場合があり、束の間の団欒ができてそれだけでも有難いとしている家族は多かった。

5)介護保険の2021年度改正に関する課題

  • ①ショートステイ(短期入所)および特別養護老人ホームの利用料に関して、ショートステイの施設利用料(食費・室料)増額に関して「増額が負担となり利用回数を減らして利用している」は11%であった。
  • ②特別養護老人ホームの施設利用料(食費・室料)増額に関しては、「利用料が増えた」36%であった。利用料の増額は、11件の回答があり、1000円から5万円まで回答によりばらつきがあった。
  • ③「訪問介護」の利用状況をチェックする新しい制度に関して、「ケアマネジャーから『新しい制度』の説明を受けた」14件、「訪問回数の検討は行っていない」32件、「訪問回数の検討を促された」7件であった。

6)認知症の人と家族の交流や活動

  • ①「認知症の人が出かける機会が減った」41%、「認知症の人の家族が出かける機会が減った」19%、認知症の人や家族に関する研修会が少なくなり、情報がなく困った」14%などであった。
  • ②2022年2月時点(第6波オミクロン株)での活動は、「家族会(家族のつどい)を行っている」35%、「認知症カフェを行っている」21%、「本人のつどい(オレンジドアや本人交流会など)を行っている」10%、「ほとんど行えていない」34%であった。
  • ③開催方法の工夫は、「オンライン(ZOOMなどの会議機能)を利用して、開催している」26%、「回数(頻度)を減らして開催している」22%、「参加人数を制限(事前申し込み制にするなど)して開催している」18%、「会場を広い場所に変更するなどして開催している」13%などであった。「コロナ下前と同様の頻度・場所・方法で開催できている」は10%あり、「LINEなどSNSやメールなどを利用して個別相談に応じている」6%、「屋外活動(散歩やスポーツなど)の機会をつくって集まっている」3%、「開催できていないが、家族同士が、少人数で集まり独自に交流を行っている」2%など些細な工夫をしているところもあった。

V.まとめ

コロナ下の影響は、依然として認知症の人と家族の心身機能と関係性にも様々な影響を与え続けている。特に、感染症罹患時や施設利用にかかわる濃厚接触時の対応は、認知症の人と家族、支援者(施設スタッフ、医療従事者等)にさまざまな混乱や困りごとを生じさせていることが改めて確認できた。

今回の調査結果から、特に重要な課題が3点ある。1点目は在宅介護における介護家族の体調不良時の支援策の早期検討、2点目は感染発生を理由にした介護保険サービスの中断を最小限にする必要、3点目は入院/入所に伴う家族の面会制限への柔軟な対応である。

在宅介護における介護家族の体調不良時の支援策の早期検討

在宅で介護をしている中で介護家族が風邪などで体調を崩した際に、家族が体調不良だと報告した時点から認知症の人などの介護保険サービスの利用がいったん保留され、介護の空白期間ができることは、生命にかかわる重大な問題である。体調不良の介護家族がいったん被介護者を家に残し検査に行くことが困難である場合があるし、検査体制が整っていない山間部や離島などでは郵送での検査となり数日の待機期間が強制されるが、その間も介護が必要な状況は続き、排泄や食事などの最低限のケアを提供しなくてはならない。その状況は、他に介護者のいない家族の場合、あるいは複数の要介護者を看ている場合には、共倒れを生む危険を孕んでいる。

感染発生を理由にした介護保険サービスの中断を最小限にする必要

認知症の人は、その症状によってマスクや手洗いなどの感染対策への協力が難しい場合もある。周囲の状況によって不安な状況に混乱する人もいる。そのような認知症の人の特性を理解して対応しないと、「サービスの利用を断られる」状況が生じる。もちろん、サービス利用による感染リスクもあるが、サービスを利用することでできている生活リズムが崩れ、機能低下を心配する家族も多い。一方で、施設での感染者の発生により一定期間サービスが利用できなくなったとき、さらに濃厚接触者として自宅待機を必要としたときに、家族もともに待機を要することになるほか、介護保険サービスも中断されることが多い。家族だけでは介護が十分できないために介護サービスを利用している場合が多い状況下で、訪問介護やデイサービスなどが利用できなくなると、これも共倒れの危険を生む。次項の面会にも関連するが、同居家族の圏域外移動や遠方家族の来訪による通所サービスやショートステイ利用の制限がエビデンスとして本当に妥当かを検討することも必要だと思われる。

入院/入所に伴う家族の面会制限への柔軟な対応

入院や入所において、2020年3月以来一度も面会できていない(オンライン面会は電話の一手法であり面会としてとらえきれない側面もある)家族が半数近く、病院ではほとんど対面できていない状況がある。コロナ下前には、入院や入所の必要な状況でも自分ができることで家族の機能を維持・向上させたいと、家族等が足しげく病院や施設に通い、リハビリテーションやマッサージ、食事介助やアクティビティケアを行ってきた。それがこれだけの長期間できなくなり、入院/入所している認知症の人もだが、看ている家族の方も刺激が減少し、「いつか面会に行くために」と感染防御の自粛生活を送りながら機能低下のリスクが生じている。お互いがお互いに支え合いながら家族との残り少ない時間を大切に育んできた家族にとって、これだけの長期間、面会ができず、ケアに参加できない状況は人間らしい生活であると言えるのか疑問がある。感染対策、健康管理などの基本的な基準をつくり、安全安心に面会ができる柔軟な対応が望まれる。

微妙なバランスの上で介護を受け/している認知症の人と家族にとって、コロナ下のこのような状況は早期に是正すべき状況である。専門職も介護家族と同様に悩み苦しんでいる状況も回答から明らかになった。家族の会いたい思いやケアをして回復させたい思いを受けとめつつ、希望に応じられないジレンマを抱える専門職も多い。

今後は、この間の経験を活かし、地域包括ケアや多職種連携で培ってきたノウハウをコロナ下でも活かすことができる、感染に強い医療介護体制が安心・安全のために必要である。感染や濃厚接触の状況を想定した介護保険サービス等による、介護家族と専門職、ボランティア等が連携協働した支援ができる支援体制構築を期待したい。

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概要版:新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響(PDF6ページ)

詳細版:新型コロナウイルス感染症影響下(コロナ下)に関する認知症の人と家族の暮らしへの影響(PDF34ページ)

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