どうするつもりか介護保険=改正の動きレポート#36【介護給付費分科会編】

介護保険・社会保障専門委員会

はじめに~次期各種サービスの改定、具体的審議すすむ~

 厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会(「分科会」)ではこれまで、今期(2021~23年)改定されたサービスごとの「調査研究報告」等を次期(2024~2027年)改定に向けて審議してきました。今期改定直後の2021年3月24日の第200回「分科会」では、さっそく『令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和3年度調査)の進め方及び実施内容について』という審議項目が示され、以降3年後の改定を前提とした審議が続けられてきました。
 今年9月27日の第225回及び10月2日の第226回「分科会」では、これまでの審議の「論点」をまとめた上で、2回にわたり、書面を含め31団体からのヒヤリングを行い、サービスごとの「改定の方向性」をまとめ、課題ごとの「対応案」を示しました。
 事務局から示された「改定の方向性」と「対応案」をもとに介護報酬改定の具体的審議がサービスごとに、10月23日の第228回「分科会」から、第229回10月26日、第230回11月6日と3回にわたって審議されました。
 今号は、10月23日午前10時から12時まで、WEB会議形式で開催された第228回「分科会」審議の動きを、委員である鎌田松代代表理事の意見及び質問を中心にお伝えします。

「分科会」委員名簿 001159413.pdf (mhlw.go.jp)

第228回「介護給付費分科会」の審議対象は以下の内容でした。

1定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び 夜間対応型訪問介護(改定の方向性)

   資料1 PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)

2小規模多機能型居宅介護(改定の方向性)

     資料2PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)

  3 看護小規模多機能型居宅介護(改定の方向性)

    資料3PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)

  4 認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム) (改定の方向性)

    資料4PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)

【鎌田代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)

【グループホームの「医療連携体制加算」は実態に合わない】

グループホームでの医療ニーズへの対応力強化という観点から「対応策」が示されました。

『看護職員の配置や医療機関等と連携している事業所においては、必ずしも医療ニーズへの対応が行われている状況にないことを踏まえ、看護体制の整備や医療的ケアが必要な者の受け入れについて適切に評価する観点から、看護体制要件と医療的ケ アが必要な者の受入要件を分けるなど、評価を見直してはどうか』

 まず認知症対応型生活共同生活介護についてです。介護人材の有効活用とその医療的ケアというところで意見を申し上げます。まず医療的ケアのところですけども、グループホームに私の義母が入居しています。看護師の常勤配置を困難にしている医療連携体制加算2,3の要件の見直しについて意見を申し上げます。医療体制加算Ⅱ、Ⅲの要件現実のグループホーム利用者の実態に合わないと思います。このような重度の医療処置のある方を常勤換算で1名以上の看護師配置と基準にはなっていますが、現実に看護人材の不足、人件費の過大で1名の配置が多いと思いますので、この要件は現実でないと思います。

医療体制加算2、3の要件

_「医療連携体制加算Ⅱ,Ⅲ」については「資料4」9頁参照

現実のグループホーム利用者の実態に合わない

 同資料8頁の「論点」の一つに、『加算 (Ⅱ)・(Ⅲ)の算定は低調(申請する事業所が少数)であり、その理由としては、「看護職員を常勤換算で1名以上確保できない」の他、「算定要件に該当する入居者がいない」などが挙がっている)』

【介護職員の医療的知識向上は家族の安心につながる】

 夜間の体制もあります。仮に介護職員に研修で可能な医療処置資格の喀痰吸引などの研修の資格を取得しても対応が難しい医療的ケアもこの要件の中には入っています。その反面利用者側からすれば、常勤で看護師が配置されていることで、看取りや医療的ケアを個別の利用者を通じて学習する、外部研修では得られない実質的な学習が出来る機会が得られるように思います。介護職員の医療的知識の向上は看取り対応や異常の早期発見対応に繋がり、家族としても安心感や安全の確保になると思っております。グループホームでのなじみの関係の中で、看取りも含めた、終の住処になっているグループホームがそういうふうになってほしいと思っています。その観点からも、対応策の内容で進めて、見直しを進めていただきたいと思っております

常勤で 資料1の9頁

 同「加算」のⅠは、医療機関との連携で看護師1名以上を「配置」ではなく「確保している」ことが要件になっています。

【グループホームでの介護人材活用調査は検証にいたらず?】

 質問です。今般の介護報酬改定の効果検証および調査研究に関わる調査の結果では、調査対象となる事業所が少なく、十分な安全の確保や職員の負担、待遇について、実態の検証を行うまでに至らなかったとありますが、調査による実態把握ができず、有効活用ができたかどうかという結論ができなかったという理解でよろしいでしょうか?前回もちょっと少し申し上げたのですけれども、この件に関して、再度お願いいたします。

今般の介護報酬改定の効果検証および調査研究に関わる調査

 「資料4」の15頁以降にある「介護人材の有効活用(3ユニット2人夜勤について)」の調査です。5人の死亡者を出した2013年の長崎県内グループホーム火災事故の後、2ユニット(入居者最大18人)一人夜勤の条件付き例外規定を廃止して、1ユニット一人を原則としてきましたが、条件付きではありますが、「介護人材の有効活用」を趣旨として見直そうとしています。

調査対象となる事業所が少なく

_「資料4」の20頁にありますが、調査対象はなんと3事業所です。

認知症施策地域介護推進課長の回答メモ 

 介護人材の有効活用3ユニット2夜勤の効果検証の結果についてご質問いただきました。これも検証結果のもとで前回もご議論させていたというふうに思っておりますが、少なくともこの確かに数は少ないということは素直に書かせていただいておりますけれども、導入したところではこの3ユニット2夜勤を活用することによってその事業所における介護人材の有効活用を図ったという効果は出ているものだというふうに捉えております。その結果、それを行うことによって日中の人員配置を手厚く変更することができた等の導入の効果も示されているというところが20ページにも改めてお示しをしているところでございます。他方ご指摘もございました通り、そうしたところでICT機器を導入することによって人員の基準の変更に見合う業務効率化削減等ができたかというところの検証がまだできていなかったというところで、そこについて引き続きの効果検証が必要であるというふうに捉えているというふうにお答えをさせいただきたいと思います。以上でございます。

介護人材の有効活用を図ったという効果は出ている

 この点について、日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長が「資料の内容から導入するメリットは理解できた」と発言しましたが、人員削減を目指す方向性をどのように評価しているのでしょうか。

【介護職の認知症専門的研修を充実させることは、本人及び介護家族等の安心につながる】

 小多機ですけれども、論点1の認知症対応力の強化のとこで、認知症ケアに対する専門的研修修了者の配置や認知症ケアの指導、研修の実施などへの評価については賛成です。在宅での中程度、重度の認知症の人の介護を困難にするのはBPSDです。この症状があるため対応が難しいと利用を断られる場合もあります。そのことは在宅介護を困難にし、介護者は追い詰められ、また認知症の人の症状もさらに悪化し、在宅介護を断念する場合もあります。このBPSDなどへの対応を研修などで、よりケアの質を高めていくことで、職員のケアが向上することやBPSDなどで私達介護者が苦慮した場合でも適切なケアへの対応を、介護者にも教えていただいたりすると安心です。サービスを断られることがないと介護の継続が可能となります。ぜひ進めてというふうに思っております。

論点1 評価については賛成です

 「資料2」の8頁「認知症対応力の強化」の「対応案」参照

最後ですけど、政府は介護職の賃上げ6, 000円相当と発表していますが、利用者や介護者としても介護労働者の皆さんが安定的に働いてくださる効果があるのなら歓迎したいところです。しかし16日の規制改革の推進会議では、介護報酬における常勤専任要件などの緩和や高齢者施設における人員配置基準の特例的な柔軟化など、人員配置が少なくてもいいというような意見が目立ちます。人員不足の中で賃上げより介護労働者を確保するのではなく、賃上げをするから、少ないスタッフで頑張ってというような交換条件のようにも覚え思えています。抜本的な人材が対策にはならないのではないか、サービスの維持を困難にするのではないかと懸念していることをこの全体の報酬改定の中で気にすることを申し上げたいと思います。以上です。

16日の規制改革の推進会議議事録 231016minutes.pdf (cao.go.jp)

 内閣府に設置されている会議で、総理大臣の諮問に応じて、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する事項を調査・審議します。

 議事録13頁に岸田内閣総理大臣が次のように語っています。

 『医療・介護従事者の常勤・専任規制の見直し、高齢者施設における人員配置基準の特例的な柔軟化といった課題につきまして、月末に取りまとめる予定の経済対策に向けて検討を加速していただきたいと思います』

 介護のある暮らしにとって、冒頭に並べた「資料」の全てが関わりのある事です。しかし、24人で構成する2時間の会議で許される一人の発言時間は3分から5分です。しかも、今回は少なめですが、全110頁の「説明資料」が委員に届いたのは1週間前の10月16日でした。こうした条件下で発言内容をまとめる委員の苦労を察するところですが、このレポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。

(まとめと文責 介護保険・社会保障専門委員会 鎌田晴之)

 

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