どうするつもりか介護保険=改正の動きレポート#37【介護給付費分科会編】
介護保険・社会保障専門委員会
第229回社会保障審議会介護給付費分科会は、228回に引き続き、2024年度の介護報酬改定に向けて、各介護保険サービスの内、通所介護、認知症対応型通所介護、療養通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護の改定内容案に加えて、入浴介助加算の見直し、長期利用の適正化、緊急時の特例継続、医療ニーズへの対応などについて審議されました。
その中で、当会より委員として出席している鎌田松代代表理事の発言内容を中心に皆さんにとって興味、関心が深いと思われる内容をお伝えします。
第229回「介護給付費分科会」の審議対象は以下の内容でした。
【資料1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
【厚労省担当者からの論点と対応案】
◆通所介護の入浴介助加算の見直しについて
入浴介助加算1の要件化として研修内容の明確化。また、入浴介助加算2の算定条件が医師等の確保困難を理由に困難である点が課題とされ、ICT活用などによる見直しが提案されました。
◆個別機能訓練加算の適正化について
機能訓練指導員の配置に対して、緩和を行うとともに現行の個別機能訓練加算について適正化を図る提案がされました。
◆コロナの3%加算と規模区分の特例を緊急時の対応加算として残すことについて
感染症や災害時の利用困難に対応するため、通所介護の3%加算・規模区分特例の緊急時対応加算としての存置が提案されました。
◆短期入所生活介護(ショートステイ)の看取り加算と長期利用について
短期入所生活介護(ショートステイ)について、看取り対応を行った場合の評価として看取り加算の提案および長期利用の現状を踏まえ、施設入所の報酬単位との均衡化が提案されました。
◆医療ニーズへの対応について
療養通所介護の短期利用導入や重度者ケアの評価、通所リハビリテーションの医療機関との連携強化など、医療ニーズへの対応が提案されました。
【厚労省の論点・提案に対する審議会委員の発言から】
◆通所介護の入浴介助加算について
基本の「入浴介助加算Ⅰ」の要件を厳格化し、入浴介助の技術を高める研修の実施などを新たに求める提案に対して、「中重度の利用者への入浴介助には人員が必要との声もあり、その視点からの評価も検討いただきたい」(全国市長会 山岸参考人)、「入浴加算Ⅰについては、急激な物価上昇、燃料費の上昇や、長時間にわたる入浴介護の労力を踏まえると、加算単価の大幅なアップが不可欠。また、今回示された入浴介助の技術として求められる研修内容の算定要件に組み込むことに関しては、様々な研修が義務化され、施設や検証研修を受ける職員にとっては、負担の増加になり、職員のオーバーワークに繋がりかねず、慎重な検討が必要である」(全国老人福祉施設協議会 古谷忠之参与)などの懸念が示された一方で、「入浴介助は留意すべきことが多く、自立支援に資するスキルの習得を推進していくことは極めて重要。是非進めて頂きたい」(日本介護福祉士会 及川ゆりこ会長)、「充実した研修が展開されることを期待している」(日本医師会 江澤和彦常任理事)と賛意が示された。
上位区分の「入浴介助加算Ⅱ」の要件を緩和し、今より算定しやすくすることを提案。浴室環境などを把握するために利用者宅を訪問する職種の中に、介護職員も一定の条件のもとで含めてはどうかとしたことに対して、「専門職の確保・連携が困難という課題はなお残るのではないか」(民間介護事業推進委員会 稲葉雅之代表委員)との指摘や、「要件の明確化・簡素化の更なる検討をお願いしたい」(全国老人福祉施設協議会 古谷忠之参与)との要請がされた。
また、「認知症の人と家族の会」の鎌田松代代表理事は、「加算IIに必要性があるのか、とても疑問だ。自宅で自立できたとしても、入浴には見守り支援が必要になる。家族の介護負担は増し、本人も不安だと思う。独居など状況によってはヘルパーの支援も必要。介護人材の有効活用の観点からもいかがなものか」と訴えました。
◆短期入所生活介護(ショートステイ)の看取り加算と長期利用について
看取り期の利用者に対するサービスの提供を新たに加算という形で評価することが提案されました。また、算定の要件として、事業所としての支援方針を策定していること、一定の看護体制をとっていることなどが上げられました。
これに対して、「算定期間に制限を設ける場合、個々の利用者の状態や思い、ご家族の状況など様々なケースが考えられるため、柔軟性を持った仕組みにして欲しい」(民間介護事業推進委員会稲葉雅之代表委員)、「認知症の人と家族の会」鎌田松代代表理事は、「賛成。看取り期だからショートは使えない、と言われないのであればありがたい」と支持しました。
ショートステイの長期利用が実態として施設への入所と同等の利用形態になっていることを踏まえ、長期利用の報酬を特養などの報酬と均衡させる形で適正化を図ることが提案され、今後、サービスの本来の目的に応じた利用を促していく観点から、具体的な検討を進める意向が示されました。
(参考)ショートステイの報酬は、利用者が連続30日を超えてサービスを使い続けると算定できません。自費での宿泊(31日目)を挟んで利用を継続していく場合は、30日を超えた日から1日30単位の減算が適用されます。こうした長期利用のケースは珍しくなく、この減算の算定率は事業所ベースで7割を超えています。
これに対して、「報酬単位の均衡を図るだけでなく、サービスの位置付けなども適正化の観点から検討する必要がある」(全国市長会 山岸参考人)、「ショートステイの長期利用を推奨するような形にならないように」(全国老人保健施設協会 東憲太郎会長)との意見が出されました。
※詳報 【鎌田代表理事による意見及び質問】
鎌田松代代表理事は以下の通り、意見及び質問をしました。
まず資料1の入浴加算2について、算定率が非常に低いということで、元々この加算が出たときにも申し上げましたが、必要性があるのかとても疑問です。この加算により、自宅で1人で入れるようになっても、入浴は命に直結する生活行為であり、見守りが必要となります。介護負担はデイでの入浴よりも増し、本人も不安です。それに加え独居などの場合は、この加算で自立と判断されても、やはりヘルパーなどの見守りサポートが必要で、家族はそちらの方も希望します。今でも少ないホームヘルパーですから、介護人材の有効活用の観点からもいかがなものかと思っています。質問ですが、この加算で自宅での入浴が自立した利用者家族の満足度の調査がされている場合、それはどんな状況だったかということを教えてください。そもそも、加算が多く制度を複雑にしているので、この加算の必要性というのを再度検討していただきたいと思います。 2つ目は機能訓練についてです。対応案は人材の有効活用ということですが、介護職員も可となっており機能訓練指導員の要件の緩和に思えます。現在の機能訓練指導員はやっぱり国家資格等の有資格者が指導員ですので、介護職員でも可となると、機能訓練のサービスの質の担保ができるのかが不安です。質問の2つ目ですが、この介護職員の具体的な要件について再度教えください。 3つ目はコロナ加算についてです。コロナの感染で事業所が閉鎖されたとき、利用者本人も、私達介護者もとてもつらい思いをしたところですので、事業継続という観点からは賛成いたします。 資料4です。短期入所生活介護で新たな看取り加算の提案は賛成です。在宅介護が困難で、ショートステイを長期に利用しています。その間に状態が悪化しても利用できるというのはありがたいと思います。これがあることによって、もう看取りだから衰弱されてるから利用できないですねということもなく、看ていただけるのはありがたいです。しかし、このような加算をしなくてはいけない在宅介護の限界、困難な状況を理解していただきたいと思います。特養の入所を待ち続けているというような現状があるので、特養が更に入りやすくなるようなことをお願いしたいと思います。 |
<認知症施策地域介護推進課長の回答メモ>
入浴介助加算2の算定時のご家族等の満足度はどうだったのかというご質問ですが、入浴介助加算は自立に向けた個浴に近い環境でなるべく入浴をしていこうということです。技術の研修の効果としても、入浴に関する自立度が高まったというような調査結果ですが、通所介護にて3割程度の方がそのような結果があったというふうに承知をしております。また、この詳細の調査の結果については、別途ご説明させていただきます。
もう一つのご質問で、機能訓練のときの指導員の要件というご質問だったかと思いますが、介護職員等は基本的介護職員等であるというふうに考えており、そこについては指示指導を受けてということだと考えているところですが、効果というのは今お答えすることは難しいと考えています。
【鎌田松代代表理事の再質問】
(質問は)入浴加算2で自立をした方の利用者とか家族の満足度がどうであったかっていうことで、研修の結果を今お示しくださったんでしょうか?ちょっとそこら辺がよくわからなかったんですが、あと機能訓練に関しては介護職員等でも可であるというふうにしていくということで、介護職員の中には資格がある人もない人もあり、国家資格があるかないかとか、初任者研修があるかとかいう資格の有無に関してこの機能訓練指導員となるための資格の要件があるかどうかっていうことを、お聞きしていました。質問が十分でなく申し訳ありません。 |
<認知症施策地域介護推進課長の再回答メモ>
入浴介助加算の研修の結果についてももう少し補足でご回答させていただきます。概ねその研修を受けていただいた結果でも満足度はそれほど変わらなかったという結果が出ているというふうに承知しています。また別途把握いたしましてご回答したいと思います。
以上
(まとめと文責 介護保険・社会保障専門委員会 鈴木 森夫)