介護保険:緊急要望書を提出!「介護のある暮らし」を支えるために

2023年12月13日、「家族の会」は厚生労働大臣に対して下記の緊急要望書を提出しました。


2023年12月13日

厚生労働大臣 武見 敬三 様

公益社団法人 認知症の人と家族の会
代表理事 鎌田 松代
介護保険・社会保障専門委員会
委員長 花俣 ふみ代

介護保険制度は「介護のある暮らし」を支えるために

~認知症の人も家族も安心して暮らせるための緊急要望書~

 2023年6月に公布された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(認知症基本法)の基本理念には「認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供されること」と書かれています。私たちは認知症基本法ができたことを喜ぶ一方で、介護保険制度の利用者負担増と給付削減に向かう審議に大きな不安を抱えています。

 介護保険制度は介護を必要とする本人、家族など介護者にとって欠かすことのできないサービスです。これまで以上に負担増、給付制限が行われると、制度そのものは持続できたとしても、「介護のある暮らし」が途切れて、崩壊の危機に直面する人たちを増やす危険性が高まります。

 少なくとも現在の「介護のある暮らし」を継続するために、以下の要望をいたします。

1 介護保険サービスの利用者負担割合は現行を維持してください

介護保険の利用者負担は1割でスタートしましたが、「一定以上所得」は2割、「現役並み所得」は3割と引き上げられてきました。とはいえ、サービスが必要と認定された人の92%は1割負担です。社会保障審議会では「一定以上所得」の基準を広げることが検討されていますが、1割から2割になれば、利用料は2倍になります。年金という固定的な収入しかない人たちが、物価高騰に直撃されるなかで、利用料が倍になれば、サービスを半分にする、あるいはあきらめる人を増やすことになります。「介護のある暮らし」を継続するために、利用者負担割合は現行制度を維持してください。

2 施設の多床室(相部屋)の室料を増やさないでください

 室料新設の対象となっている二施設(介護老人保健施設、介護医療院)は、医療を必要としている人たちの施設で、特別養護老人ホームのような生活施設ではありません。しかも、多床室を利用するのは経済的に厳しい状況にある人が多く、室料が負担できないと、行き場を失う人が出てくることも懸念されます。「介護のある暮らし」を継続するために、室料の新設をやめてください。

3 要介護1と2への訪問介護と通所介護の給付を守ってください

 要介護1・2と認定される人は「軽度者」ではありません。とくに認知症がある人は要介護1・2の時期にもっとも生活に配慮が必要であり、専門的なケアが求められます。必要不可欠なサービスである訪問介護と通所介護を給付からはずして、地域支援事業の総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に移す見直しはやめてください。認定を受けた人への法定給付と異なり、地域支援事業は予算の範囲という制約があります。自治体によってはサービスの利用が制限されるおそれがあります。認定を受けた人たちに、訪問介護と通所介護の給付が「切れ目なく提供されること」を求めます。

4 ケアマネジメントの10割給付を継続してください

 現在、ケアマネジメントの介護報酬は10割給付で、利用者負担はありません。制度がはじまって以来、「要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする」ために維持されてきました。

 介護が必要と認定された人への「相談と支援」が有料化されると、サービスの入り口からの利用者負担に、ケアマネジメントをためらう人が出てしまいます。必要なサービスを利用できないと、状態を悪化させてしまう可能性も高まります。ケアマネジメントは10割給付を続けてください。

以上


テレビ出演【要介護1,2が介護保険から外れる?】

~「家族の会」花俣副代表がテレビ出演~


要望書の提出に先立ち、2023年11 月30 日(木)に放送されました「BS・TBS 報道1930」の「直面する介護の現実/介護保険から外れる?要介護1・2 の不安とは」に花俣ふみ代副代表理事が出演し、当事者の声を伝えています。番組ではこの問題について詳しく解説、問題点を議論しています。
当日の放送が下記よりご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください。


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