どうするつもりか介護保険制度=「改正」の動きレポート#49
【介護給付費分科会】編
介護保険・社会保障専門委員会
はじめに~懸念多い介護報酬改定が決定され、厚生労働大臣への答申へ~
厚生労働省社会保障審議会第238回介護給付費分科会(「分科会」)は、1月15日午前10時から12時まで、WEB会議形式で開催されました。議題は、『1.令和6年度介護報酬改定に向けて(運営基準等に関する事項に係る諮問について』です。
審議冒頭、田辺国昭座長から今回の審議では『省令案について厚生労働大臣から、社会保障審議会長への諮問書が提出されており、これに対する当分科会の意見を報告書という形で取りまとめたい』との意向が示されました。
今回は吉元重和老人福祉課長の説明と鎌田松代代表理事の発言要旨を紹介しながら、配布資料及び厚生労働省によるYouTube配信に視聴参加した際のメモなどをもとに、問題点をお伝えしていきます。(囲み内が発言要旨)
議事次第 001189966.pdf (mhlw.go.jp)
委員名簿 001189967.pdf (mhlw.go.jp)
資料は以下の通りです。
資料1 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正の主な内容について001190287.pdf (mhlw.go.jp)
諮問書 001189969.pdf (mhlw.go.jp)
諮問書別紙 001189971.pdf (mhlw.go.jp)
報告 001190544.pdf (mhlw.go.jp)
参考資料1 令和6年度介護報酬改定に関する審議内容の概要PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)
参考資料2 令和6年度介護報酬改定に関する審議報告001190547.pdf (mhlw.go.jp)
【吉元重和老人福祉課長による「改正」案説明要旨】(視聴メモより) 『指定居宅サービス等の事業の人員、設備、運営に関する基準等の改正の主な内容については去る12月4日の第234回分科会において、当該基準等の改正案につき諮った内容を基本としている。12月4日から本年の1月3日までの間パブリックコメントの募集を行い、今回はその中での意見も反映したものである。』という前置きの後、「資料1」の要点説明が行われました。 |
指定居宅サービス
介護保険サービスの事業所は、サービス内容の種類ごとに「指定」を受ける必要があります。たとえば、事業者が訪問看護と訪問介護のサービスを提供したい場合には、訪問看護の指定と訪問介護の指定をそれぞれ受ける必要があります。
パブリックコメント
「行政手続法」の2005年6月の改正で、省庁が「省令」等を決定する場合に「広く国民から意見を募る」事が義務付けられています。「提出意見」と「提出意見を考慮した結果及びその理由」を「公示しなければならない」とされていますが、「省令」等の公布と同時期に公示することになっていますので、この審議の時点では、寄せられた「コメント」の内容は、委員にも示されていません。事務局の独断で「意見を反映」させる事に納得しづらいものがあります。結果の公示は決定後にしても、「分科会」には資料として提出し、審議の対象にすべきではないでしょうか。
この「パブリックコメント」について指摘した発言を視聴メモから紹介します。
小林司委員(日本労働組合総連総合政策推進局生活福祉局長)
『入院の所と在宅という所の連携』
「入院中に医療機関が作成したリハビリテーション計画書の入手及び把握の義務化」
資料1の1頁「訪問リハビリテーション」参照
『委員会開催が義務付け』 資料1の12頁参照 「介護現場の生産性の向上利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会設置の義務付」 『予防給付の利用者』 |
『予防給付の利用者』 要支援1と2の認定された人 |
『予防給付の方3名で1名の介護給付の利用者となる』 資料1の6~7頁参照 『ケアマネジャー1人当たりの取扱件数 基本報酬における取扱件数との整合性を図る観点から、指定居宅介護支援事業所ごとに1以上の員数の常勤のケアマネジャーを置くことが必要となる人員基準について、次のとおり見直す。 ア 原則、要介護者の数に要支援者の数に1/3を乗じた数を加えた数が 44 又はその端数を増すごとに1とする』 「取扱件数」は、ケアプラン作成への報酬を基準通り支払う要件として上限設定されています。現在は実質40名未満ですが、今回の改正で45名未満(ケアプランデータ連携システムの活用及び事務職員の配置という条件付きで50名未満)になります。また、予防給付の人は2名で1件と換算したものを3名で1件と換算されます。例えば、フルタイムのケアマネージャーが一人と半日だけのケアマネージャーが一人勤務する居宅介護支援事業所の場合、「常勤換算」という計算で1.5人となりますから、現在の取扱件数の上限は60件、例えば要介護者50名及び要支援者20名であったものが、今後は上限が67件になり、要介護者50名が変わらなければ要支援者との契約が51名までであれば、報酬を減らされることなく事業を進められますが、業務負担の増すことが想定されます。 |
『同一敷地内だったものがそれ以外のところでも兼務できる』 資料1の13頁参照 『管理者が兼務できる事業所の範囲について、同一敷地内 における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する』 |
この件に関して新田参考人(全国知事会大石健吾委員=長崎県知事の代理)の発言を視聴メモから紹介します。
という事ですが、兼務労働の常態化している職場を選ぶ人材を得られるのでしょうか。
委員会が設置されて 資料1の8頁参照
『利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会』
『生産性向上に先進的に取り組む特定施設に係る人員配置基準の特例的な柔軟化』
この委員会で、見守り機器などの活用により職員の負担軽減などが認められれば、施設などでの職員配置を現在の「要介護者3対1(要支援者10対1)」から「要介護者3対0.9(要支援者同)」とすることになります。
利用者本位というのを挙げて
厚生労働省「介護保険制度の概要」(2021年5月)の2頁スライド 1には、
「基本的な考え方」として、1 自立支援 2 利用者本位 3 社会保険方式、と三つの項目が並べられています。
『利用者本位』については、『利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、 福祉サービスを総合的に受けられる制度』と示されています。
今回は構成委員24名の内22名の参加で行われました。発言者は、鎌田松代代表理事を含めて7名のみでした。先に紹介した二人以外の委員の発言主旨を視聴メモから紹介します。
最後にあった事務局からの説明を視聴メモから
『当分科会により了承の旨の報告をされた運営基準の省令については、この後社会保障審
議会からの答申をいただいた後、交付する予定としている』
ということで、当分科会資料として用意された「諮問書」(資料)に応じてまとめられた「審議報告」(参考資料2)を添えて、社会保障審議会に報告(資料の「報告」)され、そこから厚生労働大臣に答申することになりました。
事務局の「公布する」という説明がありますが、この改定は「省令改正」という形で行われます。省令改正は、所管大臣(この場合厚生労働大臣)が最終決定権者で、国会の議決を必要としないものです。国会での議決を前提とした議論が行われないまま、私たちの暮らしに影響の大きい施策が決められてしまうわけです。行政の効率化は、国民の利益になる条件下でのみ許されるものだと思いますので、介護保険サービスの質と被保険者負担にかかわる「報酬改定」は、国会で議論されるべきではないでしょうか。
最後に、このレポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め、取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。
(まとめと文責 介護保険・社会保障専門委員会 鎌田晴之)