【緊急要望書】認知症の人が自由に安心して外出できる取組や対策の充実を

公益社団法人認知症の人と家族の会では、下記の緊急要望書を2024年12月12日に、警察庁・厚生労働省に提出します。あわせて、厚生労働省記者クラブにて、記者会見※を行います。

※記者会見への出席などは、事務局までお問い合わせください。


2024年12月12日

厚生労働大臣 福岡 資麿 様
警察庁長官 露木 康浩 様

公益社団法人 認知症の人と家族の会
代表理事 鎌田 松代

緊急要望書 
認知症の人が自由に安心して外出できる取組や対策の充実を

 認知症を有する行方不明者が年々増加傾向にあることから、下記の緊急要望をいたします。

 2024年度当会の総会で、鳥取県支部会員の荒川勉氏は妻泰子(59)さんが2023年8月の朝から行方不明となったその日のことから、現在までの捜査などの現状や心情を涙ながら語りました。行方不明となった認知症の人が今どうしているのか、いてもたって居られない、また悔やむ介護者の気持ちに会場は共感しました。そして、認知症基本法施行元年のこの時代に、改めて認知症を有する人の行方不明対策での課題と要望が提起されました。

 認知症基本法の基本理念5には、「認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むこと」を求めています。私たちの一番の懸念は認知症を有する行方不明者一人ひとりの大切な生命への思いを抱きながら、地域捜索しても未だ多くの方が見つかっていないことです。それだけではなく対策が65歳以上の高齢者に限定され、若年性認知症の人には対応されていない市町村もあること、警察での捜索体制や情報共有が、統一されていず都道府県を超えての対応ではなく、保護願い時の捜索に差があること、地域のSOS徘徊ネットワークなどの対策の更新がされていない地域があるなどの多くの課題があります。

 2018年度に当会が企業と共同で調査した「認知症の人の行方不明や徘徊・自動車運転にかかわる実態調査」でも初動対応の課題を提示しています。GPSの位置把握システムは認知症の人の所在地を明らかにしますが、認知症の人のプライバシーやそれらの捜索支援のためのシステムを身に着けることの意思決定などの問題があります。外出し自宅に戻れなくなった本人の気持ち、認知機能障害を負い居たたまれなくなり存在を消したくなる本人の気持ち、いまも帰らず、一つ一つの対応を悔やみながら愛する家族を待つ思いは誰しも想像に難くないと思います。また、靴を履かずに歩いている人に周囲が気づかず、一昼夜行方不明となっていた事例などもあり、地域の中での気づきや見守りの課題があります。

 そこで私たちは、大切な生命を守り、辛い思いをする人をなくすためにも、認知症を有する行方不明者への現行の対策の評価と見直し、捜索支援や見守り支援のための機器利用に対する認知症の人の意思を尊重した対応の指針の作成、認知症の人や認知機能が低下した人が安心して自由に外出できる認知症にやさしいまちづくりなどの下記項目を緊急要望いたします。

認知症の人が自由に安心して外出できる取組や対策の充実を求める要望項目

  1. 警察への行方不明届出後の捜索態勢や情報共有は都道府県を超え、また全国統一した対応とし、認知症を有する行方不明者は警察だけでなく地域の協力を得ながら24時間以内の発見を目指し、対応を強化すること
  2. 認知症を有する行方不明者への対策は高齢者に限定せず、若年性認知症者にも対応できる年齢制限をしない対策を全国一律の指針とすること
  3. 既存の地域のSOS徘徊ネットワークの評価と見直しを行い、充実を図るとともに「徘徊」に変わる適切な用語を用いる指針とすること 
  4. GPSなどの位置把握ツールや身元確認機能サービス等の利用に関して、認知症の人への意思を尊重した対応としていくための指針を整備すること。意思の尊重に関しては「認知症の人の意思決定支援ガイドライン研修会」などを活用し、対応方法について警察・消防や介護事業所と家族等を対象に実施すること。
  5. 地域で困っている人、異変を感じた場合はさりげなく声をかけ、安全を確保するなど認知症の人にやさしい地域づくりをさらに進めていること
  6. 「認知症ヘルプマーク」や「ヘルプマーク」等の装着、持参は認知症の人の意思を尊重していくための指針にもとづきながら、全国への普及をすすめること

以上

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