●ぼけ(認知症)とは?

 年をとると誰でも、ものを忘れることが多くなります。しかし多くのお年寄りの〈もの忘れ〉はそれほどひどくなりませんが、なかにはもの忘れがどんどん進んでぼけになる人がいます。

ぼけはもの忘れから

 ぼけの人のもの忘れは、健康なお年よりのもの忘れとはちょっと違います。たった今体験したばかりの新しいできごと、とても大切なことまで忘れてしまいます。さっき会った人のことや食べたことまで忘れてしまうのです。もの忘れが進むと自分の子ども、妻、夫が誰かも分かりにくくなります。過去にさかのぼってどんどんもの忘れが進み、まるで昔の世界に生きているようになることもあります。

判断も苦手になります

 ぼけが進むと買い物の仕方やトイレの使い方が分かりにくくなり、毎日の生活のなかで正しい判断をし、行動することが苦手になります。このため外出して道に迷ったり、トイレが間に合わずお漏らしすることなどが多くなったりします。こんな時、ぼけの人はどうしたらよいか、気持ちが動揺し混乱し不安になっています。

でも感情は残っています

 ぼけになっても心の働きがすべて衰えてしまい、何もかも分からなくなるわけではありません。もの忘れは進んでも、人としての感情やプライドは残っています。満開の桜を見れば「きれいだ」と感動し、得意な歌をほめられると「うれしい」と気分がよくなります。逆に「こんなこともできないの」と言われると悲しく、不愉快になります。

ぼけは病気です

 ぼけは単なる老化現象ではありません。多くのぼけの原因は、脳の神経細胞の働きが衰える〈アルツハイマー病〉と、脳梗塞・脳出血など脳卒中〈脳血管障害〉の二つの病気なのです。このほかにもぼけの原因はいろいろとあり、進んでしまうものと進まないものがあり、よくなるもの、治るものもあります。「おかしいな」と気づいたら早めに専門の医師の診断を受けることがとても大切です。

ぼけは若い人にもおこる

 ぼけは決してお年よりだけの病気ではありません。40代でも50代でもぼけになる人がいます。この人たちの家族は、社会の誤解と偏見のなかで社会サービスも受けにくく経済的にも苦しく、とても困っています。

家族は介護に疲れ果てる

 ぼけの人の介護は容易なことではありません。家族は日々、悩み、苦しみ、疲れ、将来への不安を抱いています。介護は一人では決してできません。家族、近所、地域、社会の大きな支えが必要です。

ぼけは私たちみんなの問題、世界の課題です

 ぼけは高齢社会を迎えるわが国にとって大きな問題です。また世界中の課題でもあります。私たちの誰もがこの病気になる可能性があり、そしてその家族になるかもしれないからです。
ぼけをみんなの課題としてとらえ「ぼけても安心して暮らせる社会」を目指していこうではありませんか!

(2001世界アルツハイマーデーのリーフレットより)