アチキ
目が覚めると、今が朝なのか、夕方なのか、何時なのか、日にちもわかりません。
コチキとのあいさつで、今が朝だということがわかってくると、定年退職していることはわすれてしまっていますが、仕事が大切であることや、朝から出かける習慣などはわすれていないので、コチキになぜ起こしてくれなかったのか、今日は会社に行く曜日なのかをたしかめます。
コチキに言われて仕事へ行く必要がないことを理解しますが、しばらくすると、コチキにたずねたこと自体をわすれてしまいます。
たずねたことはわすれてしまいますが、何か大事なことをわすれているようなモヤモヤした気持ち、仕事へ行かないといけないのではないかというあせりから、また同じことをコチキにたずねます。
コチキは何度もたずねられてイライラしますが、アチキにしてみれば初めての質問なので、コチキがなぜそんなにおこるのかがわかりません。
何度も言った!というコチキに対して、アチキは仕事に行かねばというあせりと何度もたずねた覚えがないのでイライラしますが、定年退職していることを聞いて、パニックになります。
コチキ
今朝もアチキはリビングで行ったり来たりをくり返しています。
定年退職して数年たっているのに、「会社に行かないと」と言うアチキに、コチキは何度も何度も説明しますが、また同じことを聞いてきます。
アチキがさっきたずねたことをわすれてしまうからとわかっていても、朝食の用意などいそがしい時間に何度も同じことを聞いて外出しようとするので、コチキはついつい「さっきも言ったよ!」などと強い口調で言ってしまいます。
さらにアチキに「なぜそんなにおこるのか」「聞いてない!」と言われると、どうしてもイライラがおさまりません。
でも、強く言ってしまったり、おこってしまったあとにはとても後悔し、やさしくできない自分をなさけなく思って、落ちこんでしまいます。